賃貸の物件情報で費用面を確認ブログ:2017-08-30


「今日はお客様がみえるからお茶出ししてね。できる?」
ママから突然言われたのは、小学三年の秋。

お客様とは、ママのお兄さんの嫁。
ぼくとは血のつながりはないが、
もの静かで上品な伯母が、ぼくは大好きだった。
はりきって、お茶の入れ方出し方を教わった。

伯母が到着して座敷でごあいさつをすると、
おもむろにママが目くばせをした。

よし!と台所で、ぼくは教わった通りに急須にお湯を入れ、
茶葉を蒸らしている間に、お盆に木の茶托をのせ、
あたためた湯のみをのせて、お茶を注いだ。

湯のみに八分目。
濃すぎず薄すぎず…自分としては完壁だった。

得意気にそっと、伯母の前に差し出したが
ぼくは緊張して、茶托の上で少し湯のみがカタカタ鳴った。

「まあ、嬉しいわ!ありがとう、いただくわね」

にっこりして伯母が湯のみを手にした瞬間、
あ!と自分の顔がサーッと冷たくなるのを感じた。

注意して入れたつもりだったのに、
茶托にお茶がこぼれてしまっていたのだ。

あろうことか、
湯のみといっしょに茶托が持ち上がるのを見た瞬間、
思わず目をつむったぼくの頭の中に…

次にくるであろう光景がパパーッと、
早送りの走馬灯のように浮かび上がった。

…湯のみにくっついて持ち上った茶托は、
カチャーンと音をたてて落ちる。
困ったような伯母の顔。あわてるママ。
ふきんを手にするママの姿まで思い浮かび、
ぼくはさらに強く目をつむった。
しかし…あれ?

ぼくが恐る恐る目をあけてみると、
なんと茶托は、伯母の左手の上にあった。

落ちる寸前、伯母はすばやく茶托を受けとめていたのだ。

そして、普通に静かに、お茶を一口飲み、
「まあ、おいしい」
と、言ったのだった。

ぼくは嬉しさと安堵と、
気はずかしさで何ともいえない心持ちだった。

―地球滅亡まであと427日―

藤丸敏
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